世界の論理を読む力──『教養としての国際政治』を読んで

こんにちは、クラウン情報テクノロジー代表の増井です。
今週は「社長の本棚」のカテゴリとして、豊島晋作さんによる書籍『日本人にどうしても伝えたい 教養としての国際政治──戦争というリスクを見通す力をつける』をご紹介します。

著者の豊島さんは、テレビ東京報道局所属の報道記者
現場取材を通じて培った知見と視点をもとに、国際政治の現実と背景を「論理」で解きほぐしていく一冊です。

この本は、戦争というテーマを扱いながらも、単なる危機の描写ではなく、「なぜ、国は戦うのか?」「なぜ、国は引かないのか?」といった冷静な構造分析に力点を置いています。
読み進めるうちに、国際政治を“感情”ではなく“構造”で理解する大切さを痛感しました。


各章の概要紹介

  • 第1章:次の大戦は起こるのか
     米中戦争の可能性と、その背景にある軍事戦略や相互不信の構図を分析。
  • 第2章:習近平は侵略戦争を始めるか
     中国が台湾に侵攻する可能性を、国内政治・軍事・世論の三位一体の構造で読み解きます。
  • 第3章:中国の圧力に耐えられるか
     台湾がどのように中国の脅威と対峙し、独立を守ろうとしているのかが描かれています。
  • 第4章:世界を敵に回して戦う暗殺国家
     イスラエルによるイランやハマスへの先制的・戦術的攻撃の背景を、合理的な論理で分析。
  • 第5章:世界に見捨てられた抵抗者たち
     パレスチナ問題を単なる“かわいそう”ではなく、国家を持たない集団の戦略と論理で解説。
  • 第6章:ウクライナ戦争の現在地
     ロシアによる「戦争の継続」を前提とした冷徹な論理を読み解きます。
  • 第7章:世界の終末を阻止した人々
     核の使用が現実的になったとき、どう抑止が働いたか──冷戦期の事例から学ぶ章。
  • 第8章:“新超大国”インドの論理
     西側とも中国とも距離を置き、独自の路線を歩むインドの外交戦略に注目。
  • 終章:日本という“未完の論理”
     日本が世界とどう向き合うべきか。中立・抑制を美徳とし続ける日本のリスクも問われています。

リスクとは、“起こる可能性のある未来”を直視すること

この本の中で特に印象に残ったのは、「リスク」という言葉の捉え方です。
私たちはつい、「リスク=起こってほしくないこと」として感情的に避けたくなってしまいますが、本当のリスクマネジメントとは、冷静に“起こりうる未来”を直視することだと説かれています。

これは、私たちのようなIT業界やSESビジネスにも通じる話です。

  • プロジェクトが炎上する兆しをどう読むか
  • 技術選定の先にどんな将来が待っているか
  • 組織としてどんな社会リスクに備えるべきか

こうしたことを考えるうえでも、「戦争」を題材にしたこの本の思考フレームは、決して他人事ではありません。


ベンチャー気質のメディアだからこそ、発信できた視点

著者の豊島晋作氏は、テレビ東京報道局所属の報道記者
テレビ東京といえば、他のキー局(日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日)と比べて“地味”という印象を持たれる方もいるかもしれません。

しかし、それは裏を返せば、大手の枠にとらわれない柔軟さや挑戦的なスタンスを持つ“ベンチャー気質”のテレビ局であるとも言えます。
報道局に所属しながら、書籍の執筆や国際政治の解説といった分野にも積極的に活動の場を広げている豊島氏の姿勢からは、まさにそうした社風がうかがえます。

これは、私たちクラウン情報テクノロジーのような中小IT企業にも通じる話です。
大企業ほどのリソースはなくとも、ひとりひとりが主体的に動き、専門性を磨き、発信することで、独自の存在感を発揮していく。

本書からは、国際政治という枠を超えて、「組織の規模や知名度ではなく、どんなスタンスで社会に向き合うか」という視点の大切さも学ぶことができました。


現代の世界情勢との接点──経済リスクもまた“戦略”の一部

なお、本書では触れられていませんでしたが、昨今のトランプ大統領による追加関税政策などがもたらす世界経済の不安定化も、まさに“戦争以外のリスク”として注目すべき事象です。

為替の急変動、リスク資産である株式の不安定化、金(ゴールド)投資の急増など、金融系プロジェクトを多く扱う当社としても、これらの動向は無視できません

戦争の論理も、経済リスクの論理も、根底にあるのは「いかに未来を読むか」という共通の課題です。


まとめ

『教養としての国際政治』は、戦争や国際対立を感情論ではなく“構造と論理”で捉える力を養う良書でした。

本書を通じて、以下のような視点を持つことの大切さを改めて感じました。

  • リスクとは「起こるかもしれない未来」に備える力であること
  • 国の行動には必ず「論理(構造)」があること
  • 国際情勢と無関係に見える業界(IT、金融)にも、その影響は波及してくること
  • 小さな組織でも、思考し、発信し、行動することの価値

そして何より、複雑な世界をどう読み解き、どう向き合うか──その視点を自ら持つことの重要性を再認識しました。

最後にひとつだけ。
本書では北朝鮮についての章はありませんでした。
今後、朝鮮半島の緊張や拉致問題などにもどう論理的に迫るのか──次回以降の著作に期待したいと思います。

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