「失敗の本質」から学ぶ、“組織の未来”のつくり方
こんにちは。クラウン情報テクノロジーの増井です。
8月もいよいよ最終週、月末恒例「社長の本棚」の時間です。
今年2025年は、1945年の敗戦から数えて80年の節目の年。
過去を振り返るだけでなく、未来の教訓を考えるのにふさわしいタイミングです。
今回は、日本の戦中の敗北事例を通して「組織の失敗」を分析した名著、
『失敗の本質――日本軍の組織論的研究』(中公文庫)を取り上げます。
この本が語るのは、単なる戦史の記録ではなく、現代の組織にも通じる“行動原理”の話。
軍事作戦の失敗から、私たちのプロジェクトや企業に活かせる教訓を一緒に読み解いていきましょう。
1. 歴史をなぞるのではなく、「組織を省みる」ための本
本書は、戦争そのものを語るのではなく、組織の行動原理を分析する点に特徴があります。
- なぜ意思決定が遅れたのか
- なぜ情報が現場に届かなかったのか
- なぜ上層部と現場で認識がずれたのか
これらは軍隊に限らず、企業や行政、IT現場でも日常的に起こり得る“組織の病理”です。
2. 6つの敗戦に見る「組織の落とし穴」
本書では日本軍の6つの作戦を通じて、共通して現れる構造的な欠陥を指摘しています。
- 現場軽視と精神主義(ノモンハン事件):中央と現場の認識ズレ、冷静な現状把握の欠如
- 計画の硬直性(ミッドウェー作戦):複雑な編成で柔軟性を欠き、変化に対応できず
- 全体戦略の不在(ガダルカナル作戦):バラバラな現場対応で損害を拡大
- システムの甘さ(インパール作戦):個人の情熱や精神力に依存し、組織的合理性を欠く
- 自己認識の誤り(レイテ海戦):意思統一がなく、思い込みによる突入
- 目的と手段の混乱(沖縄戦):作戦目的が曖昧なまま、現場と本部の意思統一が崩壊
これらはすべて、“組織の行動の仕方”に起因する失敗でした。
3. 固執と縦社会が招いた“思考停止”
本書が強調するのは、過去の成功体験に過度に固執したことです。
- 乃木希典将軍の旅順攻略の「成功体験」
- 東郷平八郎元帥のバルチック艦隊撃破の「神格化」
こうした過去の栄光が思考停止を招き、状況変化に適応できなくなったのです。
加えて、年功序列や階級主義が柔軟な意思決定を阻んだことも指摘されています。
4. 私たちの組織も無縁ではない
では現代のエンジニア組織には関係ない話でしょうか?
決してそうではありません。
- 過去の成功パターンにとらわれていないか?
- 若手の意見を「経験不足」と片づけていないか?
- 上層と現場の認識がずれていないか?
情報共有の断絶、目的の曖昧さ、役割の不明確さは、放置すればプロジェクトの重大トラブルに直結します。
だからこそ、失敗を“他人事”でなく、自分たちの組織の課題として捉え直すことが重要です。
5. 食いっぱぐれないエンジニアとは、学び続ける人
「昔はこうやって成功したから…」という一言が、現代の失敗の原因になることもあります。
変化に気づき、学び続け、過去のやり方を手放せる人こそ、長く活躍できるエンジニアです。
失敗から学ぶ姿勢は、食いっぱぐれない力の源泉。
技術力だけでなく、組織の見方や行動の仕方を含めた総合的なプロフェッショナリズムが求められます。
まとめ:歴史は繰り返す。しかし私たちは学べる
『失敗の本質』は、戦史を超えて組織マネジメントの教科書として読めます。
- 精神論に走る
- 情報を軽視する
- 若手のモノを言えない
- 上層と現場がかみ合わない
- 過去の成功が絶対視される
これらの“組織の病”は、今も私たちの職場に潜んでいます。
だからこそ私たちは、歴史から学び、組織をアップデートし続ける力を持たなければなりません。
それこそが、未来の失敗を防ぐ唯一の道なのです。


