金融システム入門② 債券編

こんにちは。クラウン情報テクノロジーの増井です。
前回は「株式編」で株式市場とそのシステム的な仕組みを解説しました。
今回は、株式と並んで金融の基盤を支える「債券」について取り上げます。


1. 債券とはなにか

債券は「国や企業などが資金を借りるために発行する借用証書」です。
投資家は債券を購入することで発行体にお金を貸し、その代わりに利息(クーポン)や元本返済を受け取ります。

株式と異なり、債券は 「返すことが前提」 の商品であり、安定した利息収入を得られる点が特徴です。


2. 債券の種類

  • 国債:日本国債(JGB)はもっとも代表的な安全資産。
  • 地方債:地方自治体が発行。
  • 社債:企業が資金調達のために発行。
  • MBS(住宅ローン担保証券):住宅ローンを裏付けにした債券。2008年のリーマンショックでは、サブプライムローンを証券化したMBSが引き金となりました。
    信用度は低いが利回りが高い商品として販売され、多くが低格付けであったことが危機を拡大させました。

3. 新発債と既発債

  • 新発債:発行直後に販売される債券。銘柄コードやISINコードが未定のため、システム上は「仮コード」で売買されることもあります。
  • 既発債:市場で流通する債券。売買時には、未収利息(経過利息)の精算が必要 です。

👉 未収利息の仕組みは次章で詳しく解説します。

4. 割引債と利付債

  • 割引債:利息がつかず、額面より安く購入して償還時に額面を受け取る形式(ゼロクーポン債)。
  • 利付債:定期的に利息(クーポン)が支払われる形式。日本国債の多くは利付債です。

5. 未収利息の考え方

下図は「固定利率・年2回利払いの国債(額面100円、年1%、4月1日・10月1日払い)」における 未収利息の推移 を示した概念図です。


発行直後はゼロですが、日々の経過とともに利息が積み上がり、利払い日に満額(0.5円)を受け取るとリセットされます。

さらに、例えば未収利息が0.2円の時点で既発債を購入した場合、買い手は売り手に0.2円を支払います。その後、利払い日に0.5円を受け取りますが、差し引きすると 0.3円が実質的な利息収入 です。

👉 未収利息は「投資家に帰属する経過利息」であり、システムはその精算を正確に処理する必要があります。


6. 約定ベースと受渡ベース

債券でも株式と同様に、

  • 約定ベース(T日=Trade Date):売買成立日を基準
  • 受渡ベース(T+2など):実際に受渡された日を基準

があります。会計処理や残高管理は約定ベース、権利判定は受渡ベースと、両立が必要です。


7. アモチとアキュム(超重要!)

債券システムで特に重要なのが、アモチ(Amortization)アキュム(Accumulation) です。

  • アモチ(Amortization)
    割高(プレミアム)で購入した債券は、そのままでは償還時に損が出ます。
    そこで、購入価額と額面の差額を「利息のマイナス」とみなし、所有期間に応じて分散して費用計上します。帳簿価額も徐々に引き下げます。
  • アキュム(Accumulation)
    割安(ディスカウント)で購入した債券は、そのままでは償還時に利益が出ます。
    この差額を一度に計上せず、利息の一部とみなし、所有期間に応じて分散して収益計上します。帳簿価額も徐々に引き上げます。

👉 未収利息との違い

  • 未収利息:利払い日の途中で発生している「経過利息」の処理(投資家の売買・受払いに直結)。
  • アモチ/アキュム:取得価額と額面との差額を「利息」とみなし、所有期間にわたって分散計上する会計処理。

両方とも会計・内部処理であり、システムは必ず対応する必要があります。
特に、月末や決算期には正確な処理が求められるため、債券システムにおいて超重要な要件 です。システムでは超重要な要件 です。


8. 債券と金利:身近な住宅ローンから

債券を語るうえで「利回り」は欠かせません。いくつか代表的な指標があります。

  • 表面利率(Coupon rate):発行時に定められた利率。
  • 残存利回り:残り期間を考慮して計算した利回り。
  • 最終利回り(YTM: Yield to Maturity):満期まで保有した場合に得られる利回り。
  • 利回り曲線(イールドカーブ):金利と残存期間の関係を示すグラフ。

このイールドカーブを直接コントロールする政策が、日銀の イールドカーブコントロール(YCC) です。
現在の植田総裁のもとでは、10年物国債利回りを一定水準に抑えるため、日銀が国債を売買する政策が続けられています。


YCCと私たちの生活:住宅ローンとの関係

一見、国債市場の話に思えるかもしれませんが、YCCは私たちの生活に直結しています。

  • 固定金利ローン(例:フラット35) → 長期金利に連動
  • 変動金利ローン → 日銀の政策金利(短期金利)に連動

つまり、日銀がYCCで長期金利を抑えている間は固定ローン金利は低めに安定しやすく、政策変更があれば一気に家計負担に波及します。


9. 債券の格付け

債券を評価するうえで「格付け」も重要です。

  • AAA(最高位)からD(デフォルト)まで、信用力をランク付け。
  • 格付けが低い債券は高利回りを提示しますが、リスクも高い。

サブプライムローンの証券化商品(MBS)は低格付けであったにもかかわらず、高利回りを売りに販売され、最終的に市場を混乱させました。


まとめ:債券システムは正確性が命

債券システムでは、以下のような処理が日常的に求められます:

  • 未収利息の積み上げとリセット
  • 約定ベースと受渡ベースの両方での管理
  • アモチ・アキュム処理の確実な実装
  • 新発債の仮コード対応や、格付け情報の取り込み

システム開発の現場では、これらを スピードと正確性を両立 させることが不可欠です。
当社では、こうした専門的な業務知識を持つエンジニアが最前線で活躍し、今後も仲間を募集しています。